事故によって、体の表面に大きな傷跡や瘢痕(これらを「醜状」といいます。)が残ってしまうことがあります。
以下のとおり、体のどの部位に、どれくらいの大きさの醜状が残ったかに応じて、後遺障害等級が異なってきます。
後遺障害 | 後遺障害の具体的内容 | 等級 |
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外貌に著しい醜状を残すもの ※「外貌」とは、頭部、顔面部、頸部のごとく、上肢及び下肢以外の日常露出する部分のことをいう。以下同じ。 |
「著しい醜状」は、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいう。
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7級12号 |
外貌に相当程度の醜状を残すもの | 「相当程度の醜状」とは、原則として、顔面部の長さ5cm以上の線状痕で、人目につく程度以上のものをいう。 | 9級16号 |
外貌に醜状を残すもの | (1)単なる「醜状」とは、以下のいずれかに該当するものをいう。
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12級14号 |
上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの ※「上肢の露出面」とは、肘関節以下(下部を含む)をいう。 |
「傷治癒後の黒褐色変色または色素脱失による白斑等」に係る取扱いについては、上記「外貌に醜状を残すもの」の(2)の場合と同様に取扱うこととなるが、その範囲はてのひら大の醜い痕を残すものが該当する。 | 14級4号 |
下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの ※「下肢の露出面」とは、膝関節以下(足背部を含む。)をいう。 |
14級5号 |
2個以上の瘢痕または線状痕が相隣接し、または相まって1個の瘢痕または線状痕と同程度以上の醜状を呈する場合は、それらの面積、長さ等を合算して等級を認定する。
事故によって、外貌または上肢・下肢に醜状が残存した場合、上記のとおり、醜状の部位や大きさによって、後遺障害等級7級ないし14級が認定されます。
そして、他の後遺障害の場合、労働能力喪失率としては、7級であれば56%、9級であれば35%、12級であれば14%,14級であれば5%が、それぞれ目安になります。
しかし、外貌の醜状は、対人交渉・面談等に不利益を生じさせることは容易に想像できるとはいえ、醜状それ自体は肉体的な労働能力を低下させるものではありません。そのため、過去の裁判例でも、後遺障害が外貌醜状の場合には、そもそも逸失利益自体を否定されたり(その場合でも、慰謝料の増額事由として加味する。)、上記の目安よりも低い労働能力喪失率しか認められない傾向にあります。
醜状が労働能力に影響を及ぼさない職業もあれば、俳優やファッションモデルなど外貌が重要な意味を持つ職業もあります。基本的には、逸失利益の存否およびその程度(労働能力喪失率)を判断するにあたっては、当該醜状がどれだけ労働に影響するのかという視点から判断する必要がありますので、醜状の部位・形状・大きさのほか、被害者の職業・職種・年齢、転職をした場合の再就職上の不利益の程度等を具体的に検討する必要があります。